マンション売却における取得費とは、売却時に重要な要素の一つです。
この記事では、マンション売却における取得費の意味と役割、そして計算方法について詳しく解説していきます。
マンションを売却する際には、取得費を正確に計算することが重要です。
そこで、まずは取得費の意味と役割について理解していきましょう。
マンション売却における取得費とは?
マンション売却時の重要な要素である「取得費」は、マンションの取得時に発生する費用を指します。
取得費とは、マンションを入手するために支出した費用のことであり、売却時に税金計算や減価償却の対象となる要素です。
この取得費は、売却価格から差し引かれ、譲渡所得(売却益)の計算に使用されます。
譲渡所得には、所得税や住民税がかかりますが、こちらについては「不動産売却の分離課税とは?計算方法と特例で減税できる4つの条件」で詳しくまとめていますので、ご確認ください。
取得費の対象
取得費の対象となるのは以下になります。(国税庁:No.3252 取得費となるもの)
- 土地や建物の購入代金
- 購入手数料(仲介手数料など)
- 設備費
- 改良費(リフォーム代など)
- 購入時にかかった税金(登録免許税、印紙税や登記費用)
- 入居するまでに支払った住宅ローンの利子・保証料・団信保険料
- 所有権の確保に要した費用
土地や建物の購入代金
取得費には、土地や建物の購入代金が含まれますが、マンションの場合は、マンションを購入した時に支払った代金が、取得費にあります。
相続によるマンションを取得した場合は、被相続人の購入価格を引き継ぎ、取得費が計上されます。
購入手数料(仲介手数料など)
不動産会社の仲介でマンションを購入した際に、不動産会社に支払った仲介手数料も取得費に含まれます。
設備費
マンション購入後に新たに設置した設備の購入費用は、取得費になります。
改良費(リフォーム代など)
マンション購入後にリフォームやリノベーションをした場合は、その時にかかった費用が、取得費になります。
購入時にかかった税金(登録免許税、印紙税や登記費用)
マンション購入時にかかった登録免許税や印紙税などの税金は、取得費になります。
また、登記の際に司法書士に委任した場の司法書士に支払った報酬も含まれます。
さらに、マンションを相続した場合にかかった同様の税金も取得費に含まれます。
入居するまでに支払った住宅ローンの利子・保証料・団信保険料
マンションを購入する際に借り入れた住宅ローンの利子や保証料は、借入日から実際に入居(使用開始)するまでの期間に対応する金額を取得費として計上することができます。
同様に、団体信用生命保険料についても、借入日からマンションの使用開始までの期間に対応する金額を取得費として扱うことができます。
ただし、マンションの使用開始日以降に発生する利子や保証料、団信保険料は取得費とはなりませんので、ご注意ください。
所有権の確保に要した費用
所有権などを確保するために要した訴訟費用も取得費に含まれます。
この場合、取得費に含まれるのは、例えば争いのある土地を購入した後に紛争を解決するために支払った訴訟費用です。購入者が土地を自分の所有物とするために争いを解決するためにかかった訴訟費用が取得費に該当します。
取得費の減価償却
取得費は「土地の取得費」と「建物(設備)の取得費」に分けて計上されます。
- 土地の取得費
- 建物(設備)の取得費
なぜ分けるかというと、土地は年月が経っても劣化しませんが、建物や設備は年月が経つほど、経年劣化していくからです。
そのため、建物や設備は減価償却の対象となります。
減価償却とは、資産の価値の減少に伴って費用を計上することであり、売却時の税金計算に影響を与えます。
耐用年数と償却率
建物の資産価値がゼロになるまでの年数である「耐用年数」は、建物の用途と構造によって法律で決められています。
例えば、居住用の鉄筋コンクリート造のマンションの耐用年数は70年です。
この期間において、資産価値は年間0.015ずつ減少し、これを「償却率」と呼びます。
建物の減価償却費は、マンションの用途と構造に応じた償却率を使用して計算することができます。
この費用は、建物の経年劣化に伴い、年々価値が減少していくことを考慮したものです。
以下は自宅用マンションの構造別にまとめた耐用年数と償却率の一覧です。
材質・構造 | 償却率 | 法定耐用年数 | |
---|---|---|---|
鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造) | 0.015 | 70年 | |
レンガ造、石造、ブロック造 | 0.018 | 57年 | |
軽量鉄骨造 | 骨格材の肉厚が4mm超 | 0.020 | 51年 |
骨格材の肉厚が3mm超4mm以下(金属造2) | 0.025 | 40年 | |
骨格材の肉厚が3mm以下(金属造1) | 0.036 | 28年 | |
木造、合成樹脂像 | 0.031 | 33年 | |
木骨モルタル造 | 0.034 | 30年 |
事業用の場合は、耐用年数と償却率が別で設けられています。
また、「経過年数」、6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます。
減価償却費の計算方法
減価償却費の計算方法は、以下の計算式から求められます。
減価償却費=建物部分の取得費×0.9×償却率×経過年数
経過年数とは、マンションを取得してから売却されるまでの所有期間のことで、端数は、6ヶ月以上の場合は切り上げ、6ヶ月未満の場合は切り捨てとなります。
例えば、取得してから10年5か月であれば経過年数は「10年」、10年7か月であれば経過年数は「11年」となります。
マンション売却における取得費の計算例
それでは、以下の条件での取得費の計算例をみていきます。
」と「建物(設備)の取得費」に分けて計上されます。
- 土地購入費:1,500万円
- マンション購入代金(建物部分のみ):3,000万円
- 法定耐用年数:70年
- 償却率:0.015
- 経過年数:16年
こちらを減価償却費の計算式に当てはめると、
となります。
減価償却後のマンション建物部分の取得費は、
となりました。
マンション購入時には土地の取得費も含まれていますので、それを合算すると
で、マンションの譲渡所得の計算に用いる取得費は、3,852万円となります。
取得費がわからない場合は?
マンション購入時の取得費の計算方法を説明しましたが、なかには相続などで取得費が分からない場合もあります。
その場合は、売却価格の5%の金額を取得費として、譲渡所得の計算に利用できることになっています。(国税庁:No.3258 取得費が分からないとき)
よって、例えばマンションの売却価格が4,500万円であれば、
がマンションの譲渡所得の計算に用いる取得費となります。
まとめ
この記事では、マンション売却における取得費と税金計算について解説しました。
取得費とはマンションを入手するために支出した費用であり、売却時の税金計算に影響します。
また、譲渡費用や減価償却についても触れました。
税金計算の手順を把握し、適切な節税対策を行うことは重要です。
マンション売却を検討している方は、この記事を参考にしてください。