マンション売却において年末調整や確定申告について悩んでいませんか?
マンション売却時には年末調整と確定申告が必要ですが、マンション売却における年末調整の特徴や役割、確定申告の時期やしないとどうなるかなど、詳しく解説します。
さらに、確定申告時に利用できるお得な制度や譲渡損失の活用方法もご紹介します。
この記事では、マンション売却における年末調整と確定申告の具体的な方法や注意点について詳しく解説しています。
マンション売却における年末調整とは?
マンションを売却する際の年末調整は、確定申告による所得税や住民税の計算や支払いを行うための手続きに必要なものです。
年末調整の目的と役割
一般的に、会社勤めのサラリーマンやOLの方は、年末の時期に年末調整の書類を記入し、会社へ提出しているはずです。
事業者は給与支払い時に源泉徴収として所得税を差し引きますが、年末調整は、その差額を再計算し、追加の税金を払ったり、過払い分を還付する制度です。
年末調整が必要なのは、源泉徴収が事前に計算された金額であり、所得変動や控除などの要素が考慮されていないためです。
この制度は国民全員が個別に確定申告する手続きの煩雑さや漏れのリスクを回避し、税制の安定性を確保するために導入された必要な制度というわけです。
年末調整の時期
会社勤めの方は、年末調整はおそらく11月下旬~12月初旬が多いのではないでしょうか?
年末調整の期限は1月31日までとなっていますので、事務処理に必要な時間を考慮して1,2か月前に年末調整を行います。
- 年末調整記入提出期間・・・11月下旬~12月初旬
- 期間年末調整の期限・・・1月31日
マンション売却の申告はする必要はなし!
年末調整がどういうものか理解したら、会社に提出する年末調整にマンション売却の申告もしないといけないのでは?と疑問に感じる方もいらっしゃると思います。
結論から言えば、会社にマンション売却の申告をする必要はありません。
年末調整は確定申告の手続きで所得税などの税を計算するために必要なものですが、給与などの所得と、マンションを売却した際の売却益の所得は、別々で計算されます。
分離課税
課税の方式には、大きく「分離課税」と「総合課税」の2つの方式があります。
一般的にサラリーマンやOLの給料にかけられる税金は総合課税に分類されます。
総合課税 | 複数の所得(給与所得、事業所得、不動産所得など)を合算して一括して課税する方法 |
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分離課税 | 特定の所得(不動産所得や譲渡所得など)を他の所得(給与所得や事業所得など)とは別に計算し、独立して課税する方法 |
マンション売却においては、分離課税が適用され、総合課税とは独立して課税される仕組みになっています。
そのため、マンションを売却した場合は、会社の年末調整とは別にご自身で確定申告する必要があります。
マンション売却の確定申告
マンション売却の確定申告を行うにあたって、マンション売却益がどの所得に該当するか理解しましょう。
確定申告の所得の分類は大きく以下に分かれます。
所得の種類 | 内容 |
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利子所得 | 預貯金や有価証券などから得られる利息による所得 |
配当所得 | 株式や投資信託などの配当金による所得 |
不動産所得 | 不動産の賃貸や売買による所得 |
事業所得 | 自営業や法人の事業による所得 |
給与所得 | 雇用された労働者が給与として受け取る所得 |
退職所得 | 退職金や年金など、勤務の終了に伴って得られる所得 |
山林所得 | 山林の利用や森林経営による所得 |
譲渡所得 | 不動産や株式などの資産の譲渡による所得 |
一時所得 | 宝くじや競馬などの一時的な収入による所得 |
雑所得 | その他の所得で、上記に該当しない所得 |
マンション売却の所得は、この中の「譲渡所得」に分類されます。
譲渡所得の確定申告
マンションの売却によって得た所得は、譲渡所得として確定申告を行う必要があります。
譲渡所得は、マンションを売った金額(売却価格)ではなく、売却価格から取得費を引いた金額になります。
マンションの取得費については、「マンション売却時の取得費とは?減価償却費の計算方法」で詳しくまとめていますので、ご確認ください。
確定申告の時期
マンション売却に伴う確定申告の時期は、例年としてマンションを売却した翌年の2月16日から3月15日の間で行います。
確定申告に関する特例や延長措置がある場合もありますので、最新の税制改正や税務署の公式情報を確認しましょう。
- 確定申告時期・・・例年2月16日から3月15日
確定申告しないとどうなる?
マンション売却において確定申告を怠ると、税務上の義務を果たしていないことになります。
確定申告を怠ると無申告加算税を課せられる恐れがありますので、必ず確定申告を期限内に申告しましょう。
もしも期限内で確定申告できなかったとしても、延滞税が課せられますが、確定申告することはできますので、申告を忘れている場合は、いますぐ確定申告をしてください。
売却損(譲渡損失)の場合
所得税や住民税はそもそも利益があった場合に課税されるものなので、マンションを売却して譲渡所得が0あるいはマイナスの場合は、課税のしようがありません。
そのため、年末調整や確定申告はする必要はありません。
しかし、マンション売却で譲渡損失があった場合、確定申告をすることで、他の所得と相殺して計算できる場合があります。
相殺できれば、所得金額が減りますので、比例して所得税や住民税の額も少なくて済みます。
相殺するにはいくつか条件がありますが、少しで節税したい方は、確定申告時に利用できるお得な制度を確認しましょう。
確定申告時に利用できるお得な制度
確定申告時には、いくつかのお得な制度を活用することができます。
以下に代表的な制度をご紹介します。
3000万円特別控除の特例
マンション売却による所得が3000万円以下の場合、特別控除が適用されることがあります。これにより、所得に対して一定額の控除が受けられるため、納税額の軽減が期待できます。
マイホームを売却する際、所有期間の長短に関わらず、譲渡所得から最大3,000万円の特別控除が適用されます。
この特別控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 売却した不動産には売り主自身が居住していたこと
- 売買が親族間のものではないこと
- 売却した年から過去2年間に、同じ特例や譲渡損失の特例を利用していないこと
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、10年以上所有しているマンションを売却する際に、譲渡所得税の税率を下げる制度です。
適用要件は、以下のとおりです。
- 売却した年の元日時点で当該の不動産や土地を所有している期間が10年を超えていること
- 自ら居住していた不動産を売却する、もしくは不動産と併せてその土地も売却すること
- 過去3年間で当該の特例もしくは譲渡損失に関しての特例が適用されていないこと
- 当該の不動産や土地でマイホーム買い替えや交換に関しての特例が適用されていないこと
- 親子や夫婦、親族間の売買ではないこと
10年超所有軽減税率の特例を利用すると、譲渡所得税の税率が最大で14.21%まで下げられます。
また、軽減税率の適用を受けるためには、確定申告の際に、所得税の確定申告書に「10年超所有軽減税率の特例の適用に関する明細書」を添付する必要があります。
他の特例と併用することもできるので、長期間居住用に所有をしたマンションを売却する際にはぜひ利用したい制度です。
特定居住用財産の買換え特例
「特定居住用財産の買換え特例」は、令和5年12月31日までに住居を買い換えて譲渡損失が発生した場合に、その損失分を他の所得から控除できる制度です。特例の条件は以下の通りです。
- 住居の売却・買い換えであること
- 売却不動産の所有期間が10年以上であること
- 買い換える建築面積が50㎡以上であること
- 買い換えるが土地が500㎡以下であること
- 売却金額が1億円以下であること
- 買い換えた年の翌年12月31日までに住む予定があること
なお、特例の控除額が一度で消化しきれない場合、翌年から3年の間に繰越控除ができます。
これにより、損失分の控除を複数年にわたって行うことが可能です。
譲渡損失の損益通算及び繰越控除
不動産の売却による損失が発生した場合、令和5年12月31日までに売却した場合、その損失分は他の所得から控除することができます。
さらに、控除しきれない場合は翌年から3年間、繰越控除が可能です。
ただし、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 住居不動産の売却であること
- 売却した不動産の所有期間が5年以上であること
- 住まなくなってから3年目の12月31日までに売却されること
- 売買契約締結の前日時点で、10年以上の住宅ローンが残っていること
まとめ
マンションを売却する際には、会社に提出する年末調整に申告する必要はありません。
ただし、マンションは給与の所得とは別に譲渡所得として確定申告する必要があります。
マンション売却損(譲渡損失)がでた場合であっても、特例や控除を利用して確定申告をすれば節税にもなりますので、必ず自分に当てはまるかどうか特例や控除を確認しましょう。