マンションを売却すると、所得税と住民税がかかります。
マンションを売却した翌年の住民税は、前年の住民税よりも高くなりますが、条件を満たせば住民税を節税する方法がいくつかあります。
例えば、小規模住宅用地等の減額特例、3,000万円特別控除、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算などです。
このページでは、マンションを売却した際の住民税の計算方法や住民税の節税対策についても解説しています。
マンション売却時に知っておきたい税金のことや節税の方法を学びたい方は必見です。
マンション売却時でかかる税金
マンションを売却した際には、所得税と住民税がかかります。
- 所得税・・・国や地方自治体が個人や法人から得る所得に対して課税する税金
- 住民税・・・地方自治体が住民から徴収する税金
所得税は売却益に対して課税されるものであり、住民税は売却益に応じて地方自治体が課税する税金です。
それぞれの税金について詳しく見ていきましょう。
所得税とは
マンションを売却した際に、マンションの売却益があれば、所得税の課税対象となります。
逆に、マンション売却で譲渡損失(売却損)があった場合は、課税する所得がないため、所得税はかかりません。
しかし、確定申告をすることで、他の所得と相殺して計算できる場合があり、節税対策にもつながります。
こちらは、後程詳しく解説していきます。
ちなみに、マンションの売却によって得た所得は譲渡所得に分類され、マンションを売った金額(売却価格)ではなく、売却価格から取得費を引いた金額になります。
マンションの取得費については、「マンション売却時の取得費とは?減価償却費の計算方法」で詳しくまとめていますので、ご確認ください。
住民税とは
マンションを売却した際に、マンションの売却益があれば、住民税の課税対象となります。
住民税の税率は、マンションの売却によって得た所得金額(譲渡所得)に応じて5%あるいは9%課税されます。
5%と9%の違いは、譲渡所得の種類の違いです。
譲渡所得には、以下の2つの所得があります。
- 短期譲渡所得:マンションの所有期間が5年以下の場合
- 長期譲渡所得:マンションの所有期間が5年を超える場合
住民税の計算方法
住民税の税額は、次の計算式で計算されます。
住民税=譲渡所得×税率
税率は、先ほども簡単に説明しましたが、以下の通りです。
課税譲渡所得金額 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
住民税の計算例
例えば、所有期間4年の課税譲渡所得が2,500万円だった場合は、
となります。
所有期間が6年で課税譲渡所得が2,500万円だった場合は、
となります。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の住民税を比較すると4%の差があります。
金額が大きいほどその差が大きいことが分かりますが、所得税だけみると短期譲渡所得は、長期譲渡所得の2倍多くの所得税を支払わなければいけません。
もしも所有期間が3,4年で売却を急いでいない方は、所有期間5年を過ぎてから売却したほうが住民税だけでなく所得税も節税につながる可能性がありますので、売却時期を先延ばしにするか検討しましょう。
住民税の支払い時期
所得税と住民税の納付時期は、それぞれ以下の通りです。
- 所得税:原則3月15日(納期限が土曜日、日曜日、国民の祝日・休日の場合は、その翌日)
- 住民税:6月、8月、10月、翌年1月(普通徴収の場合)
所得税は、確定申告後に納付します。
確定申告は、毎年2月16日から3月15日までの期間に行うことができます。
住民税の支払い方法
住民税の支払い方法には、自分で納付する「普通徴収」と、給与から天引きで納める「特別徴収」の2種類があります。
こちらは、確定申告の際に住民税の納付方法について選ぶことができます。
- 普通徴収:納税通知書が送付され、納付書や口座振替により納付する
- 特別徴収:給与所得者や年金所得者の給与や年金から、毎月差し引いて納付される
普通徴収
「普通徴収」を選んだ場合は、6月、8月、10月、翌年1月の4回に分けて、住民税を納めます。納付書は、各市町村から6月上旬に届きます。
特別徴収
「特別徴収」を選んだ場合、普段支払っている住民税と同じように、毎月の給与所得から天引きで納めることになります。
納税のために特別な手続きをする必要がなく、また納税額が月々に分割されるので、支払い1回あたりの負担は軽くなります。
ただし、「特別徴収」を選んだ場合、あなたの支払う住民税額を会社に通知されます。
給与所得以外に所得があったことを会社に知られたくない場合には、「自分で納付」を選ぶとよいでしょう。
マンション売却時の所得税・住民税の節税対策
マンション売却時の所得税・住民税を節税する方法には、次のようなものがあります。
れらの特例を活用することで、住民税の負担を軽減することができます。
- 3,000万円特別控除
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算
- 所有期間10年超の場合の軽減税率
3,000万円特別控除
マンションを売却した際、次の6つの要件を満たせば、譲渡所得税の3,000万円の特別控除の特例が適用されます。(国税庁:No.3302マイホームを売ったときの特例)
正式には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といい、この特例を受けるには以下の条件が必要です。
- 自分が住んでいる家屋を売却すること
- 売却した年の1月1日において、売却した家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること
- 売却した年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと
- 売却した家屋や敷地について、マイホームの買換えや交換の特例など他の特例の適用を受けていないこと
- 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと
特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
3,000万円の特別控除の特例を受けるためには、確定申告書に「譲渡所得の特別控除に関する明細書」を添付して提出する必要があります。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算
マンションを売却して、他の居住用住宅を買い換える際に、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例があります。(国税庁:No.3355特定のマイホームを買い換えたときの特例)
この特例は、正式には「特定の居住用財産の買換えの特例」と呼ばれています。
この特例を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 売却したマイホームと買い換えたマイホームは、日本国内にあること。
- 売却代金が1億円以下であること。
- 売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること。
- 買い換える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下のものであること。
- マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること。
- 買い換えたマイホームには、取得した時期により次の期限までに住むこと。
- 売った年かその前年に取得したときは、売った年の翌年12月31日まで
- 売った年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日まで
- 買い換えるマイホームが、令和6年1月1日以後に入居した(または入居見込みの)建築後使用されたことのない住宅で、次のいずれにも該当しないものである場合には、一定の省エネ基準(断熱等性能等級4以上および一次エネルギー消費量等級4以上)を満たすものであること。
- 令和5年12月31日以前に建築確認を受けているもの
- 令和6年6月30日以前に建築されたもの
- 買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または一定の耐震基準を満たすものであること。
- 買い換えるマイホームが、耐火建築物以外の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または、取得期限までに一定の耐震基準を満たすものであること。
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
所有期間10年超の場合の軽減税率
マイホームを売却した際、次の5つの要件を満たせば、譲渡所得税の軽減税率の特例が適用されます。(国税庁:No.3305マイホームを売ったときの軽減税率の特例)
- 日本国内の自分の住んでいる家屋を売却すること
- 売却した年の1月1日において、売却した家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること
- 売却した年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと
- 売却した家屋や敷地について、マイホームの買換えや交換の特例など他の特例の適用を受けていないこと
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売却しないこよ
軽減税率の特例を受けるためには、確定申告書に「マイホームの譲渡に関する特例の適用に関する申告書」を添付して提出する必要があります。
まとめ
マンションを売却する際には所得税と住民税が発生しますが、適切な節税対策を行うことで負担を軽減することができます。
マンション売却時の住民税について、所得税との関係や計算方法、特例措置の活用方法などを理解し、効果的な節税対策を行いましょう。
しかし、個々のケースによって異なる要素が存在するため、専門家や税務署のアドバイスを受けることをおすすめします。
税金の面でもスムーズにマンション売却を行い、理想的な節税効果を得ることができるようにしましょう。