土地の不動産取得税は、地目で2倍違います。さらに、新築分譲マンションを購入すると、土地の不動産取得税が0円になることも。
なぜ、そうなるかというと、税額を減税する「不動産取得税の軽減措置」があるからです。
土地の不動産取得税の軽減措置をうまく利用することは、節税にもつながります。
記事の内容
- 土地の不動産取得税の課税対象は、すべての地目
- 土地取得による不動産取得税の軽減措置
- 宅地取得の軽減措置は、課税標準の半額(1/2)
- 宅地以外の地目でも宅地比準土地なら半額
- 住宅を建てた(建てる)宅地取得の軽減措置は、納税額から減額
- 納税額からの軽減措置は、新築未使用が原則
- 建て替え前提の中古住宅も適用される
- 不動産取得税の非課税条件
- 不動産取得税が非課税になる6つのケース
- 例外的に課税されない免税点で、非課税となる
このページでは、損をしないために、土地の不動産取得税について、軽減措置の適用条件などを徹底解説しています。
不動産取得税の軽減措置の適用条件を知らずにいると、必要のないお金を払うことになりますので、損をしないためにもしっかり理解しましょう。
土地の不動産取得税の課税対象
不動産取得税は、土地や家屋の不動産を取得したときに一度だけかかる税金 のことです。土地のみを取得した場合は、土地に対して不動産取得税が課税されるということです。
土地には、地目といって土地の用途ごとに区分されています。
- 宅地(住宅用の土地)
- 田
- 畑
- 山林
- 公衆用道路など
冒頭で、「土地の不動産取得税は、地目で2倍違う」といったのは、取得した土地が「宅地」であれば、1/2(半額)の納税額で済むからです。
この「1/2(半額)」になるのが、不動産取得税の軽減措置です。
土地取得による不動産取得税の軽減措置
土地取得による不動産取得税の軽減措置の内容が分かるよう、以下の3つのパターンで、具体的に計算していきます。
- ①宅地以外の土地を取得した場合
- ②宅地を取得した場合
- ③住宅を建てた(建てる)宅地を取得した場合
宅地以外の土地を取得した場合
宅地とは住宅用の土地のことで、地目の1つです。
地目は「不動産登記事務取扱手続準則第68条」で、全23種類に分けられています。よって、宅地以外の土地とは、「宅地」を除いた22種類が対象ということになります。
地目の種類 | 具体例 |
---|---|
田 | 農耕地で用水を使って耕作する土地 |
畑 | 農耕地で用水を使わずに耕作する土地 |
宅地 | 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地 |
学校用地 | 校舎,附属施設の敷地及び運動場 |
鉄道用地 | 鉄道の駅舎,附属施設及び路線の敷地 |
塩田 | 海水を引き入れて塩を採取する土地 |
鉱泉地 | 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地 |
池沼 | かんがい用水でない水の貯留池 |
山林 | 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地 |
牧場 | 家畜を放牧する土地 |
原野 | 耕作の方法によらないで雑草,かん木類の生育する土地 |
墓 | 地人の遺体又は遺骨を埋葬する土地 |
境内地 | 境内に属する土地であって,宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号及び第3号に掲げる土地 (宗教法人の所有に属しないものを含む。) |
運河用地 | 運河法(大正2年法律第16号)第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地 |
水道用地 | 専ら給水の目的で敷設する水道の水源地,貯水池,ろ水場又は水道線路に要する土地 |
用悪水路 | かんがい用又は悪水はいせつ用の水路 |
ため池 | 耕地かんがい用の用水貯留池 |
堤 | 防水のために築造した堤防 |
井溝 | 田畝又は村落の間にある通水路 |
保安林 | 森林法(昭和26年法律第249号)に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地 |
公衆用道路 | 一般交通の用に供する道路(道路法(昭和27年法律第180号)による道路であるかどうかを問わない。) |
公園 | 公衆の遊楽のために供する土地 |
雑種地 | 以上のいずれにも該当しない土地 |
宅地以外の土地を取得した場合、土地の不動産取得税の計算式は、以下のとおりです。
不動産取得税額=固定資産税評価額(課税標準)×3%
例えば、評価額1,000万円の「畑」を購入した場合は、
が、土地の不動産取得税です。
宅地の土地を取得した場合
宅地の土地を取得した場合、土地の不動産取得税の計算式は、以下のとおりです。
不動産取得税額=固定資産税評価額(課税標準)×1/2×3%
土地の地目が「宅地」というだけで、固定資産税評価額(課税標準)が半額(1/2)になります。
例えば、評価額1,000万円の「宅地」を購入した場合は、
が、土地の不動産取得税です。
同じ評価額の「畑」と「宅地」では、納税額が2倍違うことになります。これが、土地の不動産取得税の軽減措置です。
こちらの軽減措置の内容と条件は、以下のとおりです。
計算式 |
---|
不動産取得税額=固定資産税評価額(課税標準)×1/2×3% |
特例内容 |
固定資産税評価額(課税標準)が半額(1/2)になる |
条件 |
・宅地及び宅地比準土地であること ・2024年(令和6年)3月31日までに宅地及び宅地比準土地を取得すること |
「畑」でも半額になる!?
宅地を取得したときの軽減措置の条件を見ると宅地以外に「宅地比準土地」とあります。宅地比準土地は、宅地とほぼ同じ価格で評価額がつく土地のことです。
例えば、「田」や「畑」などの農地であっても市街地の真ん中にあれば、その土地は宅地並みに価格がつくため、そういった土地が宅地比準土地の対象というわけです。
つまり、東京のど真ん中にある「畑」を取得すると、宅地とみなされ、土地の不動産取得税が半額になるというわけです。
ただし、宅地並みの価格がついているので、宅地比準土地でない「畑」と比べると、かなり割高です。
住宅を建てた(建てる)宅地を取得した場合
住宅を建てた(建てる)宅地とは、主に以下の場合が該当します。
- 宅地を購入して、注文住宅を建てる(土地を先に取得)
- 建売住宅を購入する(土地と建物を同時に取得)
- 分譲マンションを購入する(土地と建物の所有権を同時に取得)
住宅を建てた(建てる)宅地を取得した場合、土地の不動産取得税の計算式は、以下のとおりです。
不動産取得税額=固定資産税評価額(課税標準)×1/2×3%ー控除額
住宅を建てる土地は「宅地」のため、固定資産税評価額(課税標準)が半額(1/2)になる軽減措置が適用されています。
さらに、今回住宅の取得が絡んだ軽減措置として、納税額から減額されます。
こちらの軽減措置の内容と条件は、以下のとおりです。
計算式 |
---|
不動産取得税額=固定資産税評価額(課税標準)×1/2×3%ー控除額 |
特例内容 |
納税額からA・Bのうち多い金額を控除する (A)4万5000円 (B)土地1㎡当たりの固定資産評価額×1/2×住宅の床面積×2(200㎡が限度)×3% |
条件 |
①住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下であること (戸建以外の貸家住宅は一戸当たり40㎡以上240㎡以下) ②以下の(1)~(3)のいずれかに該当すること (1)未使用住宅を築1年以内に取得した場合 (2)土地を取得した日から3年以内(やむを得ない事情がある場合は4年)に住宅が新築された場合 (3)住宅を新築した取得者が、築1年以内に土地を取得する場合 |
まず、購入あるいは建てる予定の住宅の床面積が、50㎡以上240㎡以下であることが条件です。もしも、購入した住宅が投資用の貸家住宅の場合は、「40㎡以上240㎡以下」に緩和されています。
もう一つの条件は、以下の(1)~(3)のいずれかに該当することです。
- (1)未使用住宅を築1年以内に取得した場合
(2)土地を取得した日から3年以内(やむを得ない事情がある場合は4年)に住宅が新築された場合
(3)住宅を新築した取得者が、築1年以内に土地を取得する場合
この3つに共通することは、未使用の「新築」であることです。
中古住宅の土地を取得した場合は、こちらの軽減措置は利用できませんので、ご注意ください。ただし、建て替え前提の中古住宅を購入した場合は、こちらの軽減措置を受けられます。
建て替え前提の中古住宅
一般的に中古住宅を購入するということは、土地と既存建物を購入するということです。不動産取得税は、土地と建物それぞれに課税されますが、建て替えを前提に購入した場合、既存建物の不動産取得税はかかりません。
というのも、既存建物を6か月以内に解体して、解体証明書を提出すれば、不動産取得税がかからないからです。そして、新たに住宅を新築すれば、その新築住宅に対して不動産取得税が課税されます。
この流れで、土地の不動産取得税の軽減措置にスポットを当てると、
- 中古住宅(土地+既存建物)を購入→土地・既存建物の不動産取得税が課税
- 既存建物を6か月以内に解体→既存建物の不動産取得税が非課税
- 既存建物解体後の土地に3年以内に住宅を新築→納税額から減額される軽減措置が適用
となります。
なぜ軽減措置が適用されるかというと、「(2)土地を取得した日から3年以内(やむを得ない事情がある場合は4年)に住宅が新築された場合」に該当するからです。
土地を取得して3年以内に住宅を新築すれば、そこまでの経緯は関係ありません。土地のみを購入して3年以内に住宅を新築した場合と同じことです。
よって、建て替え前提で中古住宅を取得した場合も、条件を満たせば、こちらの軽減措置を受けられます。
計算例
それでは、こちらの軽減措置を適用した不動産取得税の計算をみていきましょう。
まず、以下の控除額を計算する必要があります。
- 控除額=以下のA・Bのうち多い金額
(A)4万5000円
(B)土地1㎡当たりの固定資産評価額×1/2×住宅の床面積×2(2000㎡が限度)×3%
例えば、評価額1,000万円の200㎡の土地に、床面積120㎡の住宅を新築した場合、(B)を計算すると
となります。
(A)4万5000円と(B)18万円のうち大きい金額が控除額となりますので、「18万円」が控除額となります。
これを土地の不動産取得税の計算式に当てはめると、
となります。
納税額が「-3万円」ということは、0円ということです。
このように、住宅を新築する前提の土地の不動産取得税は、軽減措置により優遇されています。
軽減措置内容まとめ
- ①宅地以外の土地を取得した場合
- ②宅地を取得した場合
- ③住宅を建てた(建てる)宅地を取得した場合
土地を取得した場合の、3つの軽減措置の内容をまとめると、以下のとおりです。
軽減措置の種類 | 計算式 | 適用条件 |
---|---|---|
①宅地以外の土地を取得した場合 | 固定資産税評価額(課税標準)×3% | – |
②宅地を取得した場合 | 固定資産税評価額(課税標準)×1/2×3% ※「税率」の特例適用 |
・2024年(令和6年)3月31日までに宅地及び宅地比準土地を取得すること |
③住宅を建てた(建てる)宅地を取得した場合 | 固定資産税評価額(課税標準)×1/2×3%ー控除額 ※「税率」の特例適用 ※「課税標準」の特例適用 |
・住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下であること(戸建以外の貸家住宅は一戸当たり40㎡以上240㎡以下) ・以下の(1)~(3)のいずれかに該当すること (1)未使用住宅を築1年以内に取得した場合 (2)土地を取得した日から3年以内(やむを得ない事情がある場合は4年)に住宅が新築された場合 (3)住宅を新築した取得者が、築1年以内に土地を取得する場合 |
こちらを見ると、土地のみの取得よりも、住宅用の宅地を取得したほうが優遇されていることが分かります。
不動産取得税の非課税条件
軽減措置により土地の不動産取得税がいくら減税されるか解説してきましたが、そもそも土地を取得しても非課税になることがあります。
不動産取得税が非課税になる6つのケースは以下の通りです。
- 相続による不動産取得
- 包括遺贈による不動産取得
- 公共の用に供する道路の取得
- 土地区画整理事業等での換地の取得
- 法人の合併・分割による不動産取得
- 特定の法人による事業用の不動産取得
代表的なのは、相続による土地の取得です。土地を相続で取得した場合は、売買などと異なり、あくまで「形式的な所有権の移動」とみなされるため非課税とされています。
相続などの非課税対象でない土地であっても、非課税となる場合があります。
それが、例外的に課税されない免税点です。
免税点とは、税法によって一定金額あるいは一定数量に満たなければ、課税対象に対して課税しないとするもので、不動産取得税の免税点は以下のように定められています。
対象 | 免税点の額 (課税標準) |
---|---|
土地 | 1つの土地につき10万円未満 |
建築(新築・増築・改築)による家屋 | 1戸につき23万円未満 |
建築以外での売買、贈与等による家屋 | 1戸につき12万円未満 |
不動産取得税の非課税については、「不動産取得税がかからない非課税になる6つのパターンと2つの特例」で詳しく解説していますので、ご確認ください。
まとめ
ここまで、土地の不動産取得税について、詳しく解説してきました。
要点をまとめると以下のとおりです。
- 土地の不動産取得税の課税対象は、すべての地目
- 土地取得による不動産取得税の軽減措置
- 宅地取得の軽減措置は、課税標準の半額(1/2)
- 宅地以外の地目でも宅地比準土地なら半額
- 住宅を建てた(建てる)宅地取得の軽減措置は、納税額から減額
- 納税額からの軽減措置は、新築未使用が原則
- 建て替え前提の中古住宅も適用される
- 不動産取得税の非課税条件
- 不動産取得税が非課税になる6つのケース
- 例外的に課税されない免税点で、非課税となる
土地のみを購入する場合でも、宅地であれば半額になりますし、建物を建てる場合は0円になる場合もあると理解できたと思います。
軽減措置を利用することで、数十万単位の節税につながります。節税したお金で家具や家電の購入に回すこともできます。
損をしないためにも、適用される条件を理解し、土地の不動産取得税の軽減措置を利用するようにしましょう。