不動産を相続で取得する場合、兄弟で共有持分することがよくあります。
共有持分すると、不動産を売却しようとする際に共有者全員の合意が必要となるため弊害もあります。
そこで、共有物を分割する共有物分割を考える方もいますが、不動産を共有物分割する際に気をつけないと不動産取得税がかかる場合があります。
こちらでは、共有物分割や不動産取得税がかからない方法について、わかりやすく解説していきます。
- 共有持分と共有物分割の違い
- 割合は面積ではなく評価額
共有持分と共有物分割の違い
共有持分とは 『複数人が1つの不動産を共同で所有した状態の所有権の割合』のことです。
複数人が不動産を所有していることを共有名義といいますが、共有者全員の合意がなく勝手に売却することができません。
共有物分割は、字のごとく 『複数人で共有していた不動産を分割して、単独者の所有物とすること』です。
例えば、一つの土地を分筆して、2つの土地に物理的に分割することを共有物分割といい、1つの不動産の共有状態を解消する手続きとして共有物分割が行われます。
不動産取得税が非課税になる条件
共有物分割は1つの不動産を分割し、共有状態を解消するものですが、本質は、共有物を分割することで、その分割した不動産の持ち分を取得する行為となります。
つまり、本来は「不動産の取得」に該当し、その際に課せられる動産取得税の課税対象となります。
しかし、この共有物分割による取得は、地方税法第73条の7第2号の3により不動産取得税は非課税とされています。
道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
一 相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得
二 法人の合併又は政令で定める分割による不動産の取得
二の二 法人が新たに法人を設立するために現物出資(現金出資をする場合における当該出資の額に相当する資産の譲渡を含む。)を行う場合(政令で定める場合に限る。)における不動産の取得
二の三 共有物の分割による不動産の取得(当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。)
不動産取得税は、不動産の取得に対して課税される税金です。
共有物の分割により不動産を取得した場合には、分割前の共有物に係る持分の割合を超える部分を取得した場合にのみ、不動産取得税がかかります。
これは、分割前の共有物に係る持分の割合の範囲内で分割後の不動産を取得したのであれば、流通税としての不動産取得税を課すべき不動産所有権の移転が実質的にはなかったものとみることができるためです。
ただし、持分の割合によっては、不動産取得税が課税されますので、注意が必要です。
割合は面積ではなく評価額で決まる
共有物分割による取得は、地方税法第73条の7第2号の3により不動産取得税は非課税とされていますが、以下のように定められています。
当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。
この「持分の割合を超える部分」がポイントで、面積の割合ではありません。
土地を分割する場合は、均等に面積で分割しようと考える方が多いです。
例えば、1/2ずつ共有持分を持っている土地を2つに分ける際に、共有持分の割合と同様に面積を1/2ずつ分けると、場合によっては不動産取得税が課税されます。
それは、不動産取得税の課税は、土地の面積ではなく固定資産税評価額から判断されるからです。
固定資産税評価額は土地に状況によって変わることがありますので、面積を均等に分けたと出た場合であっても 評価額の違いがある場合があります。
典型的な例としては角地にある土地です。
角地にある土地を2つに分けると「角地の土地」と「角地でない土地」の2つに分かれます。
固定資産税評価額は、角地の方が高く評価されるため、角地にある土地の評価額が上がれば、その上回った分に対して不動産取得税が課税されます。
他にも南向きの土地や土地の形状など評価に影響しますので、共有物を分割する際には、分割面積を調整して、不動産取得税がかからないようにします。
しかし、土地の評価を一般の方は判断できませんので、不動産鑑定士など業者へ依頼したほうが無難です。
まとめ
ここまで、共有物分割や不動産取得税がかからない方法について、わかりやすく解説してきました。
共有持分は、税制的なメリットもありますが、相続で受け継がれていく際に共有物分割の時期が来ます。
現金があるのであれば、最初から現金で不動産を買い取るのも一つの方法です。