不動産取得税は、新たに土地や建物を得ると課税される地方税です。
ただし、非課税枠が設けられているため、すべての人が課税されるわけではありません。
非課税枠の対象外でも、軽減措置により不動産取得税がかからないケースもあります。
こちらでは、不動産取得税がかからないケースと、課税対象でも課税されないケースを紹介します。
不動産取得税とは
不動産取得税は、不動産を取得した際にかかる税金です。
購入だけでなく、交換や贈与、寄付などでも税金が発生します。
不動産取得税は一度だけ支払うものであり、毎年の支払いではありません。
不動産取得税は都道府県が課税主体であり、取得後に納税通知書が届きます。
ただし、不動産取得税には特例や軽減措置があり、不動産取得税が非課税になる場合もあります。
不動産取得税の非課税になるケース
不動産取得税が非課税になる6つのケースは以下の通りです。
- 相続による不動産取得
- 包括遺贈による不動産取得
- 公共の用に供する道路の取得
- 土地区画整理事業等での換地の取得
- 法人の合併・分割による不動産取得
- 特定の法人による事業用の不動産取得
関係法令
(形式的な所有権の移転等に対する不動産取得税の非課税)
第七十三条の七 道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
一 相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得
二 法人の合併又は政令で定める分割による不動産の取得
二の二 法人が新たに法人を設立するために現物出資(現金出資をする場合における当該出資の額に相当する資産の譲渡を含む。)を行う場合(政令で定める場合に限る。)における不動産の取得
二の三 共有物の分割による不動産の取得(当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。)
二の四 会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第百八十三条(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成八年法律第九十五号。以下この号において「更生特例法」という。)第百四条又は第二百七十三条において準用する場合を含む。)、更生特例法第百三条第一項(更生特例法第三百四十六条において準用する場合を含む。)又は更生特例法第二百七十二条(更生特例法第三百六十三条において準用する場合を含む。)の規定により更生計画において株式会社、協同組織金融機関(更生特例法第二条第二項に規定する協同組織金融機関をいう。以下この号において同じ。)又は相互会社(更生特例法第二条第六項に規定する相互会社をいう。以下この号において同じ。)から新株式会社、新協同組織金融機関又は新相互会社に移転すべき不動産を定めた場合における新株式会社、新協同組織金融機関又は新相互会社の当該不動産の取得
三 委託者から受託者に信託財産を移す場合における不動産の取得(当該信託財産の移転が第七十三条の二第二項本文の規定に該当する場合における不動産の取得を除く。)
四 信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託により受託者から当該受益者(次のいずれかに該当する者に限る。)に信託財産を移す場合における不動産の取得
イ 当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者
ロ 当該信託の効力が生じた時における委託者から第一号に規定する相続をした者
ハ 当該信託の効力が生じた時における委託者が合併により消滅した場合における当該合併後存続する法人又は当該合併により設立された法人
ニ 当該信託の効力が生じた時における委託者が第二号に規定する政令で定める分割をした場合における当該分割により設立された法人又は当該分割により事業を承継した法人
四の二 資産の流動化に関する法律第二条第十三項に規定する特定目的信託で次に掲げる要件の全てを満たすものの原委託者(同法第二百二十四条に規定する原委託者をいい、当該特定目的信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者に限る。)が、当該特定目的信託の信託財産に属する不動産(同法第二条第十六項に規定する受託信託会社等が、当該特定目的信託の効力が生じた時に当該原委託者から当該特定目的信託の信託財産として取得したものであつて、当該原委託者に賃貸したものに限る。)を当該特定目的信託に係る信託契約の終了の時に買い戻す場合における当該不動産の取得
イ 当該特定目的信託に係る信託契約において、資産の流動化に関する法律第二百三十条第一項第二号に規定する社債的受益権(ハにおいて「社債的受益権」という。)の定めがあること及び当該社債的受益権の元本の償還に関する事項として政令で定める事項を定めていること。
ロ 当該原委託者の信託した特定資産(資産の流動化に関する法律第二条第一項に規定する特定資産をいう。)が投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすものとして政令で定める要件を満たすものであること。
ハ 当該特定目的信託の効力が生じた時から引き続き当該原委託者及び当該特定目的信託の社債的受益権を有する者のみが当該特定目的信託の信託財産の元本の受益者であること。
五 信託の受託者の変更があつた場合における新たな受託者による不動産の取得
五の二 相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第四十六条第一項の規定による承認に基づき物納の許可があつた不動産をその物納の許可を受けた者に移す場合における不動産の取得( 地方税法第七十三条の七)
相続による不動産取得
法定相続人が相続によって不動産を取得する場合、不動産取得税はかかりません。
相続とは、亡くなった人が所有していた財産や権利・義務を、配偶者や子どもなど一定の身分関係にある人が受け継ぐことを言います。
相続では、亡くなった人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「法定相続人」といいます。
法定相続人、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人で、以下が該当します。
- 第1順位:子ども、代襲相続人(直系卑属)
- 第2順位:親、祖父母(直系尊属)
- 第3順位:兄弟姉妹、代襲相続人(傍系血族)
これら法定相続人が相続によって不動産を取得した場合は、不動産取得税はかかりません。
相続による不動産取得については、「相続で不動産取得税はかからない!贈与や遺贈は課税対象で要注意!」で詳しくまとめていますので、ご確認ください。
包括遺贈による不動産取得
包括遺贈による不動産取得も不動産取得税がかかりません。
遺贈とは、遺言書によって財産を他人に無償で譲り渡すことです。
遺贈は、相続とは異なり、遺言書で指定した人が財産を取得することができます。
遺贈には、以下の2種類があります。
- 包括遺贈:財産を指定せずに「割合」のみを指定して譲り渡すこと
- 特定遺贈:遺言者の特定の財産を特定の人に譲り渡すこと
不動産を取得する方が、法定相続人の場合は、包括遺贈や特定遺贈であったとして、不動産取得税はかかりません。
受遺者・遺贈方法・不動産取得税の関係を表すと以下のようになります。
遺贈方法 | 法定相続人 | 相続人以外 |
---|---|---|
特定遺贈 | 非課税 | 課税 |
包括遺贈 | 非課税 | 非課税 |
法定相続人以外の第三者が不動産取得した場合は、「特定遺贈のみ」不動産取得税が課税されます。
包括遺贈の場合は、法定相続人であっても相続人以外の第三者であっても不動産取得税はかかりません。
遺贈の種類で不動産取得税が課税・非課税になる点に注意しましょう。
遺贈による不動産取得税については「遺贈での不動産取得税の計算方法と納税義務の3つの条件」で詳しくまとめていますので、ご確認ください。
公共の用に供する道路の取得
公共の利用に供される道路は「公衆用道路」とも呼ばれ、一般の人々が利用する道路や私道を指します。
たとえば、公道と公道の間に位置する私道は、周辺住民によって広く利用されるため、公共の用に供する道路に該当します。
このような土地を取得した場合は、不動産相続税は課税されません。
ただし、「公共の用に供する道路」として認めてもらうためには、市町村(東京都23区は都)に申告をする必要があります。
「公共の用に供する道路」と認められない場合は、不動産取得税の課税対象となりますので、ご注意ください。
土地区画整理事業等での換地の取得
土地区画整理に伴う「換地」の取得も非課税となります。
換地とは、土地区画整理によって所有している土地が整理され、新たに割り当てられた土地のことを指し、土地所有者に換地を割り当てることを「換地処分」といいます。
土地区画整理事業は、一般的に良好な住宅地をつくることを目的としており、中には所有していた土地の面積が減る場合がありますが、その場合は、不公平感をなくすために「清算金」が支払われます。
「換地処分」が行われることは、そうそうあることではありませんが、もしも対象者となった場合、不動産取得税がかからないことを覚えておきましょう。
法人の合併・分割による不動産取得
法人の会社などが合併したり、分割することによって不動産を取得した場合は、不動産取得税がかからないことが多いです。
事業譲渡等の手法によって不動産を移転した場合には、不動産取得税が課税されますが、合併は譲渡ではなく、包括的な事業の移転であるため、不動産取得税は非課税となります。
また、会社分割も包括的に事業の移転があることから、非課税の対象ですが、次の要件を満たす必要があります。
- 金銭の不交付
- 按分型要件
- 株式の継続保有
- 主要な資産の引継ぎ
- 従業員の引き継ぎ
特定の法人による事業用の不動産取得
特定の法人が不動産を本来の事業目的に使用する場合、不動産取得税は非課税となります。
代表的な特定法人とその事業用途は以下の通りです。
も包括的に事業の移転があることから、非課税の対象ですが、次の要件を満たす必要があります。
- 学校法人:保育・教育の場として使用する不動産
- 宗教法人:境内の建物および境内地
- 社会福祉法人:老人ホームや児童養護施設など一定の社会福祉の事業の用に供する不動産
ただし、非課税となるのは本来の事業目的に利用される不動産に限られます。
本来の事業目的と異なる目的で取得した不動産は課税されます。
課税対象でも不動産取得税がかからないケース
課税対象でも不動産取得税がかからないケースは以下の通りです。
- 不動産価格が免税点の不動産取得
- 新築・中古住宅の軽減措置
不動産価格が免税点の不動産取得
不動産取得税の計算方法は以下の通りです。
不動産取得税額=固定資産税評価額(課税標準)×税率
固定資産税評価額(課税標準)によって、不動産取得税額が決まり課税されます。
固定資産税評価額(課税標準)については、「固定資産税評価額とは?調べ方や計算方法をわかりやすく解説!」で詳しくまとめていますので、ご確認ください。
しかし、固定資産税評価額(課税標準)が免税点の額であれば、不動産取得税は課税されません。
免税点とは、税法によって一定金額あるいは一定数量に満たなければ、課税対象に対して課税しないとするもので、不動産取得税の免税点は以下のように定められています。
対象 | 免税点の額 (課税標準) |
---|---|
土地 | 1つの土地につき10万円未満 |
建築(新築・増築・改築)による家屋 | 1戸につき23万円未満 |
建築以外での売買、贈与等による家屋 | 1戸につき12万円未満 |
取得した土地が免税点の額(課税標準)であれば、不動産取得税はかかりません。
新築・中古住宅の軽減措置
新築住宅と中古住宅では、不動産取得税の軽減措置として、1,200万円の控除を受けられる場合があります。
これは、一定の条件を満たした新築住宅の建築あるいは、新築・中古物件を購入したとき、『固定資産税評価額(課税標準)から1,200万円を控除』する特例です。
こちらを考慮した不動産取得税の計算式は以下になります。
不動産取得税額=(固定資産税評価額(課税標準)-1,200万円)×税率
つまり、固定資産税評価額(課税標準)が1,200万円以下の場合は、不動産取得税額がマイナスとなるため、非課税というわけです。
新築住宅の軽減措置については、「新築でも不動産取得税がかからない2つのパターンと非課税・免除について」で詳しくまとめていますので、ご確認ください。
まとめ
不動産を新たに取得する場合、通常は不動産取得税がかかります。
ただし、相続による取得や免税点以下の不動産価値であれば非課税となります。
取得した不動産が課税対象なのか、非課税なのかチェックして、不動産取得税を払いましょう。