注文住宅の坪単価別相場と坪単価について知らないと損をする3つのこと

ハウスメーカーや住宅販売業者の広告やチラシでよく見かけるのが「先着10名様!坪単価40万円!」といったような宣伝文句です。

また、注文住宅の相場を知りたくて坪単価で確認する方も多いですが、目安とする分には坪単価で確認してもいいですが、坪単価の高い安いで施工業者は選ぶべきではありません

今回は、坪単価とはそもそもなんなのか、坪単価の相場がどれぐらいなのかについて確認していきます。

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坪単価とは?

坪単価とは、建物の床面積1坪に対してどれぐらいの建設費がかかったのかを算出したものです。床面積の1坪を㎡に換算すると約3.3㎡となります。

【坪単価】
坪数 = 延床面積 ÷ 3.3㎡
坪単価 = 建物の本体価格 ÷ 坪数
【延床面積】
延床面積は、建物の各階の床面積を合計した面積になります。
例えば、1階が80㎡で2階が70㎡であれば、延べ床面積は80㎡+70㎡=150㎡となります。
80㎡ + 70㎡ = 150㎡

例えば、延床面積150㎡の注文住宅を建てる際にかかった本体価格が3,000万円の場合は、以下のように計算されます。

【延床面積150㎡、本体価格3,000万円の坪単価】
坪数 = 150㎡ ÷ 3.3㎡ ≒ 45.5坪
坪単価 = 3,000万円 ÷ 45.5坪 ≒ 65.9万円/坪

ちなみに「坪」とはメートル法が導入される前に使用されていた尺貫法(しゃっかんほう)の単位です。長さや距離を表すもので「尺」「間」「丈」などがありますが、面積や地積を表すもので「反」「畝」「」があります。

尺貫法では、1辺が6尺(1尺=10/33m)の正方形の面積が1坪となり、1坪は(10/33m×6)²≒約3.3㎡となります。

よく1坪は畳2枚分と言われますが、畳のサイズは地域によってさまざまです。しかし、不動産公正取引協議会では、畳の大きさは900mm×1,820mmの約1.62㎡が基準とされており、この基準に一番近いのが愛知・三重・岐阜の中京地方で普及している中京間で約1.65㎡となります。

中京間の畳1枚分は約1.65㎡ですので、2枚分は1.65㎡×2=3.3㎡で1坪畳2枚分と言われるのはこの中京間のことを指します。

他にも畳の大きさは以下のようなものがあります。

畳規格 畳サイズ 畳1枚の面積(㎡)
不動産公正取引協議会基準 900mm×1,800mm 1.62
中京間(三六間) 909mm×1,818mm 1.65
京間(本間) 955mm×1,909mm 1.82
江戸間(関東間、田舎間、五八間) 879mm×1,958mm 1.54
団地間(五六間) 848mm×1,697mm 1.44
1坪は約3.3㎡で畳2枚分(中京間)となる

坪単価はハウスメーカーや工務店によって算出方法が違う!?

坪単価の算出方法はハウスメーカーや工務店によって違うことがあります。違う要因として挙げられるのは「床面積の範囲」と「本体価格に含まれる範囲」の2つです。

延床面積と施工床面積では坪単価が変わってくる

延床面積は各階の床面積の合計ですが、吹き抜け部分やベランダ・バルコニーの先端から2mまでの範囲、ロフト、小屋裏収納、玄関ポートは床面積に含まれません

ハウスメーカーや工務店の坪単価には、この床面積に含まれない面積が含まれて計算されているものもあります。

この床面積に含まれない面積を含んだ面積を「施工床面積」と言います。

この延床面積と施工床面積では、坪単価が変わってきますので、例を挙げてみていきます。例えば、延床面積が150㎡、施工床面積が160㎡の注文住宅を建てる際にかかった本体価格が3,000万円の場合は、以下のように計算されます。

【延床面積150㎡、本体価格3,000万円の坪単価】
坪数 = 150㎡ ÷ 3.3㎡ ≒ 45.5坪
坪単価 = 3,000万円 ÷ 45.5坪 ≒ 65.9万円/坪
【施工床面積200㎡、本体価格3,000万円の坪単価】
坪数 = 200㎡ ÷ 3.3㎡ ≒ 60.6坪
坪単価 = 3,000万円 ÷ 60.6坪 ≒ 49.5万円/坪

延床面積で注文住宅の坪単価を算出すると65.9万円/坪ですが、施工床面積から坪単価を算出すると49.5万円/坪と16.4万円/坪も安くなります

ハウスメーカーや工務店の中には、このように施工床面積を使って坪単価を安く見せかけようとする業者もいますので、坪単価で使用される面積がどの範囲のものなのかチェックする必要があります。

建物の本体価格に含まれる項目によって坪単価が変わってくる

坪単価で利用される建物の本体価格は一般的に建物だけの価格を指し、屋外設備の工事や外構工事は含まれないことが多いです。

この本体価格は明確にどこまでの項目を含めるのか決まりがないため、純粋な建物だけの価格であったり、外構工事を含めた価格であったり、ハウスメーカーや工務店によってまちまちです。

広告やチラシでは、小さな文字で以下のようなに書かれているものもありますので、どの範囲までの金額が含まれるのかを確認し、トータルでどれぐらいの費用がかかるのかも確認しましょう。

外構費・水道負担金・消費税込
プラン中の外構及び植栽、屋外の給排水工事費、特殊基礎、水道加入金、屋外の電気工事費は価格に含まれております。ローン手数料・登記料及びその他の諸費用は別途となります。
プランの価格には太陽光発電システムが含まれます。なお、太陽光発電システムは2013年製のため、固定買い取り制度の対象外となります。
棟上げ工事、内装工事、標準基礎工事などは当社標準工事により施工し販売価格に含まれております。屋外の電気・ガス・給湯器・給排水の配管・配線工事、造園・門柱・門扉の外構工事及びエクステリア工事、特殊基礎、地番改良工事等、浄化槽、旧家屋の解体工事費用は含まれません。

坪単価が大きく変わる3つの要因

坪単価は、「床面積の範囲」と「本体価格に含まれる範囲」で変わると説明しましたが、これらはハウスメーカーや工務店によって変わる内容です。坪単価に影響を与える要因は以下の3つがあります。

建物の形状や間取りによって坪単価が変わる

ハウスメーカーのプランの多くは、本体価格を安く抑えるために四角形の住宅が多いです。例えば、注文住宅の形状を凹型にすると外壁の面積が増えることで本体価格も高くなります。

他にも、同じ延べ床面積で3LDKと4LDKでは、3LDKより4LDKのほうが1つ部屋が多いため間仕切りの壁が増えるので、本体価格が高くなります。

もちろん3LDKと4LDKで延床面積が異なれば、坪単価もさほど変わらないかもしれませんが、同じ延べ床面積でリビングは吹き抜けで広い空間にしたいといった要望で部屋数を減らせば、1部屋分の壁が不要になるので、3LDKより4LDKのほうが坪単価は高くなります。

このように建物の形状や間取りによっては、材料費や工事の手間賃が増えるので本体価格も高くなり、坪単価も上がります。

複雑な建物は材料費や工事の手間賃が増えるので坪単価が上がる

建築材料や設備の仕様・グレードによって坪単価が変わる

ハウスメーカーや工務店のプランには、同じような間取りで建築材料・設備も標準タイプを設定しています。

例えば、システムキッチンはもっと高機能のものに変えたいであったり、和室は漆喰や珪藻土にしたいなどグレードアップをする場合もあります。

そうなると建築材料や設備の単価が高くなるので、比例して坪単価も高くなります。そういった意味でもどういうグレードを利用しているかが分からないので、坪単価の相場は参考程度にとどめておくのがよいかと思います。

建築材料や設備の単価に比例して坪単価も高くなる

土地あり・土地なしで坪単価が変わる

住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」のデータによると、注文住宅を建てる際に土地を元々所有している場合(土地あり)の建物の建設費相場は3,312.2万円、土地を購入する場合(土地なし)の建設費相場は2,663.3万円となっています。

延床面積は、土地がある場合は129.4㎡、土地がない場合は113.3㎡とさほど差はありません。

建設費は全国平均の相場になりますので、土地を所有しているか所有していないかで坪単価も変わることが分かります。

こちらについては「注文住宅の相場と相場を見誤らないためのたった1つのポイント」で詳しく解説していますので、ご確認ください。

土地ありと土地なしでは建設費に差があり、坪単価が変わる

注文住宅の坪単価別相場

坪単価について分かったところで注文住宅の坪単価別相場について国土交通省の建築チャック統計調査のデータをもとに相場をみていきます。

建築着工統計調査とは?

建築着工統計調査は、建築基準法第15条第1項の規定により届出が義務づけられている建築物を対象とした統計調査で、毎月調査結果が公表されます。

調査項目としては、建築物の着工状況について建築主別の建築物の数や延床面積、工事費予定額などがあり、こちらのデータは住宅の着工状況だけをまとめた住宅着工統計(新築の居住専用住宅・個人・一戸建て)のデータになります。

都道府県別の坪単価の相場

こちらのデータは都道府県別にまとめた坪単価の相場データになります。

都道府県 坪単価(万円/坪) 延床面積(㎡) 工事費予定額(万円) 件数
北海道 60.7 124.0 2,280 11,222
青森県 55.6 126.5 2,131 3,334
岩手県 60.7 121.0 2,227 3,946
宮城県 62.0 125.7 2,363 5,858
秋田県 57.2 122.1 2,117 2,204
山形県 58.7 127.2 2,262 2,634
福島県 64.2 126.9 2,467 5,516
茨城県 60.3 119.5 2,184 7,907
栃木県 60.5 121.2 2,223 5,353
群馬県 61.8 120.4 2,254 6,034
埼玉県 62.6 118.0 2,240 13,974
千葉県 65.1 117.7 2,321 12,170
東京都 70.8 116.8 2,505 13,550
神奈川県 70.2 116.0 2,470 13,346
新潟県 60.0 124.6 2,265 5,417
富山県 60.3 132.5 2,420 2,960
石川県 60.3 129.3 2,364 3,565
福井県 58.1 134.3 2,366 2,117
山梨県 62.3 122.1 2,305 2,655
長野県 64.9 122.8 2,413 5,979
岐阜県 64.4 125.0 2,438 5,580
静岡県 66.1 121.4 2,433 10,609
愛知県 68.9 125.3 2,616 18,228
三重県 65.5 122.3 2,427 4,996
滋賀県 59.8 121.8 2,209 4,056
京都府 61.4 116.1 2,163 4,335
大阪府 61.2 118.4 2,198 10,635
兵庫県 62.0 120.6 2,265 9,358
奈良県 60.5 122.7 2,250 2,544
和歌山県 58.8 118.3 2,110 2,604
鳥取県 59.8 121.3 2,199 1,539
島根県 61.0 120.2 2,222 1,555
岡山県 65.8 118.7 2,367 5,137
広島県 63.8 119.3 2,306 5,257
山口県 62.2 114.7 2,160 3,385
徳島県 56.1 122.1 2,076 1,952
香川県 60.7 121.8 2,240 2,881
愛媛県 57.2 116.8 2,025 3,604
高知県 60.6 115.9 2,130 1,444
福岡県 60.7 120.4 2,215 9,758
佐賀県 59.7 121.9 2,204 2,128
長崎県 57.3 115.5 2,005 2,842
熊本県 57.8 113.0 1,981 6,796
大分県 58.0 118.8 2,089 2,655
宮崎県 53.1 115.6 1,863 3,046
鹿児島県 57.2 110.0 1,906 4,389
沖縄県 70.6 116.6 2,493 2,250
都道府県 坪単価(万円/坪) 延床面積(㎡) 工事費予定額(万円) 件数

国土交通省「2017年度建築着工統計調査」調べ

データの項目にある「工事費予定額」は建築工事届け時点の予定工事額で完成した時点の工事額ではありません。若干の差異がありますので、参考程度にとどめてください。

予定工事費の坪単価相場を見ると53.1万円/坪~70.8万円/坪の範囲で、注文住宅を建てていることが分かります。

坪単価の最大差は70.8万円/坪-53.1万円/坪=17.7万円/坪で、全国平均の延べ床面積から工事費予定額を算出すると17.7万円/坪×(120.5㎡÷3.3㎡/坪)≒646万円の差があります。

都道府県 坪単価(万円/坪) 延床面積(㎡) 工事費予定額(万円) 件数
首都圏 67.2 117.1 2,384 53,040
近畿圏 60.6 119.7 2,199 33,532
東海圏 66.2 123.5 2,478 39,413
その他地域 60.3 121.3 2,216 137,319
全国 63.0 120.5 2,300 263,304

こちらは、三大都市圏とその他の地域ごとにまとめたデータで地域区分は以下の通りです。

【三大都市圏】
首都圏:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県
近畿圏:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県
東海圏:愛知県、岐阜県、静岡県、三重県
その他地域:上記以外の地域

全国平均の坪単価相場は「63.0万円/坪」となっていますが、首都圏・東海圏が高く、近畿圏はその他地域とほとんど同じぐらいの相場になっています。

都道府県 坪単価(万円/坪) 延床面積(㎡) 工事費予定額(万円) 件数
北海道 60.7 124.0 2,280 11,222
東北 59.7 124.9 2,261 23,492
北関東信越 61.8 122.3 2,289 22,783
南関東 65.3 118.8 2,351 74,211
東海 66.3 124.2 2,494 28,804
北陸 59.6 132.0 2,384 8,642
近畿 60.6 119.7 2,199 33,532
中国 62.5 118.8 2,251 16,873
四国 58.7 119.1 2,118 9,881
北部九州 59.3 119.2 2,141 14,728
南九州 59.4 114.8 2,066 19,136

こちらのデータは地方をもう少し細かくまとめたデータになります。

地域区分は以下の通りです。

東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
北関東信越:栃木県、群馬県、新潟県、長野県
南関東:茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県
東海:岐阜県、愛知県、三重県
北陸:富山県、石川県、福井県
近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
北部九州:福岡県、佐賀県、長崎県
南九州:熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

先ほどのデータはその他地域がひとまとめにされていましたが、細かく地方を分けると「東北」「北陸」「四国」「九州」では坪単価が50万円台と低いですが、「東北」「北陸」は延べ床面積が全国平均よりも広いので、その影響で坪単価が低くなっていると考えられます。

注文住宅は坪単価60万円で建てる人が多い

こちらのデータは坪単価を50万円台・55万円台・60万円台・65万円台・70万円台と5万円刻みにまとめたデータになります。

延床面積(坪) 平均延床面積(坪) 工事費予定額(万円) 坪単価(万円/坪) 件数 件数割合
50万円/坪台 53.1 115.6 1,863 3,046 1.2%
55万円/坪台 58.0 120.7 2,120 42,854 16.3%
60万円/坪台 61.6 121.8 2,275 137,118 52.1%
65万円/坪台 66.3 121.1 2,433 51,140 19.4%
70万円/坪台 70.5 116.5 2,489 29,146 11.1%

注文住宅の坪単価別の件数をみると60万円台が137,118件と一番多く、全国件数の52.1%の方が60万円台で注文住宅を建てているのが分かります。

延床面積は35~40坪で建てる方が92.5%

こちらのデータは延床面積を坪換算して30坪~35坪・35坪~40坪・40坪~50坪と5坪刻みにまとめたデータになります。

延床面積(坪) 平均延床面積(坪) 工事費予定額(万円) 坪単価(万円/坪) 件数 件数割合
30坪~35坪 34.1 2,015 59.1 14,570 5.5%
35坪~40坪 36.6 2,260 61.7 243,657 92.5%
40坪~45坪 40.4 2,393 59.2 5,077 1.9%

注文住宅の延床面積別の件数をみると35坪~40坪台が243,657件と一番多く、全国件数のなんと92.5%の方が延床面積35坪~40坪の範囲で注文住宅を建てているのが分かります。

35坪~40坪台の坪単価を見ると61.7万円/坪と先ほど坪単価別でまとめたデータの中で坪単価60万円台で建てている方が多い傾向と一致します。

つまり、注文住宅を建てる方の多くは、延床面積が35坪~40坪の範囲で坪単価60万円台の家を建ていることになります。

建築士・宅地建物取引士・建築積算士・被災建築物応急危険度判定士・SEOコンサルタント

分離発注で家建築。
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